相撲の取組で、力士が一直線に相手を土俵の外へ押し出す様子を「電車道」と呼びます。この言葉は、昔の電車のレールがほとんどまっすぐであったことに由来しています。この記事では、この「電車道」という相撲用語の意味や使われ方、さらには関連する相撲用語や相撲文化について詳しく解説します。相撲の用語で電車道という言葉がありますが、一体何なのでしょうか。その他にも使われているけれどあまり知られていない相撲用語にも触れながら説明していきたいと思います。

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相撲の「電車道」とは何か?その意味と語源
相撲における「電車道」とは、立ち合いから一直線に相手を土俵の外へと出す取組のことを指します。あっという間に勝負がつき、相手が全く反撃できないまま終わる相撲とも言えるでしょう。決まり手としては、寄り切りや押し出しになることがほとんどです。
この言葉の由来は、昔の電車のレールがそのほとんどがまっすぐだったことにあるとされています。日本で初めて路面電車が営業を開始したのは、明治28年(1895年)の京都市電伏見線で、東京では明治36年(1903年)に東京電車鉄道が営業を開始しています。相撲で「電車道」という言葉が使われるようになった正確な時期は不明ですが、明治28年以降、遅くとも明治30年代後半までには用いられるようになったと推定されています。私の経験上、この「電車道」という表現は、まさに電車の軌道のように一直線に進む力士の勢いを表すのに非常に的確だと感じています。
「電車道」はどんな時に使われる?具体例と力士のエピソード
「電車道」は、実力が拮抗する幕内でもたびたび見られる、非常に迫力のある勝ち方です。例えば、令和5年九州場所での大関・豊昇龍さんと豪ノ山さんの取組では、豪ノ山さんが「電車道」で寄り切って白星を挙げました。このように、立ち合いから一気に相手を土俵の外に押し出す相撲を表現する際に使われます。
かつて吉本興業に所属していたお笑い芸人の中に「電車道」という4人組のグループが存在したり、SEX MACHINEGUNSの2002年のシングル『世直しGOOD VIBRATION』のCW収録曲に「電車道」という曲があったりするなど、相撲以外の分野でもこの言葉が使われることがあります。
「電車道」は、昭和の名横綱・柏戸さんの代名詞でもあった力強い相撲の代名詞でもあります。所要時間わずか1秒で勝敗が決まることもあり、体重や体の幅があり、なおかつ瞬発力がある力士だけが発揮できる、見ていて最も気持ちの良い勝ち方だと評されています。しかし、一瞬の勝負であるため、変化技に弱く、ケガの危険性を常にはらむ相撲でもあります。そのため、相撲を長く取り続けるのが難しいことや、出世や番付の維持が厳しいといった側面も指摘されています。
相撲の決まり手と「電車道」の関係性
「電車道」は、厳密には相撲の決まり手の一つではありません。立ち合いから相手を一気に押し出す、あるいは寄り切るという、相撲の展開や勝ち方を表す通称的な言葉です。決まり手としては「寄り切り」や「押し出し」がほとんどであり、「電車道」はその過程や様態を形容する言葉として用いられます。従来の認識とは異なり、「電車道」は特定の技の名前ではなく、力士の圧倒的な勢いを表現する言葉として理解することが重要です。
相撲の基本用語を徹底解説!「電車道」以外もこれでマスター
相撲には「電車道」以外にも多くの特徴的な用語が存在します。ここでは、いくつか主要な相撲用語を解説します。あまり知られていないけれど、相撲の魅力を深く理解するために重要な用語にも触れていきます。
「おっつけ」とは?相手の力を封じる重要な技術
「おっつけ」とは、相手の腕を自分の体につけるようにして、相手の差し手を封じる技術です。これにより、相手は力を出しにくくなり、自分の有利な体勢に持ち込みやすくなります。これは、相手の攻撃を未然に防ぎ、自分のペースに引き込むための非常に重要な技術です。

「ごっつぁんです」の意味と、力士が使う場面
「ごっつぁんです」は、相撲界で使われる感謝の言葉です。食事の前後や稽古の終わりなど、さまざまな場面で力士が感謝の気持ちを伝える際に用いられます。この言葉は単なる感謝だけでなく、相撲部屋における共同生活や、師弟関係、仲間との絆を象徴する言葉でもあります。
「いなす」とは?相手の攻撃を受け流す巧みな技
「いなす」とは、相手の攻撃を受け流す、あるいはかわす技のことです。相手の力を利用して体勢を崩させたり、攻撃をかわして有利な体勢に持ち込んだりする際に使われます。力士の柔軟性や瞬時の判断力が求められる、非常に高度な技術です。
「四つ」とは?組んでからの力比べを制する基本
「四つ」とは、力士同士が互いにまわしを取り合って組む状態を指します。この状態からの力比べが相撲の醍醐味であり、それぞれの得意な組み手によって勝敗が左右される重要な要素ですです。歴代の大横綱には、双葉山さん、羽黒山さん、栃錦さん、(初代)若乃花さん、大鵬さん、北の湖さん、千代の富士さん、貴乃花さん、朝青龍さんといった四つ相撲の力士が名を連ねています。押し相撲で大成した横綱は皆無に等しいとされています。
「右差し」とは?有利な体勢を作るための差し手
「右差し」とは、相手の右腕の下から自分の右腕を入れてまわしを取る形を指します。まわしを取ることで、より有利な体勢で相手を攻めることができます。これは、力士が自分の得意な形に持ち込み、勝負を有利に進めるための基本的な技術の一つです。
相撲と文化:土俵に上がる意味と関連するキーワード
相撲は単なるスポーツではなく、日本の長い歴史と文化に深く根ざしたものです。その中には、儀式的な意味合いを持つものや、ファンとのつながりを示すものなど、様々な要素が含まれています。

力士が「土俵に上がる」ことの意味とは?
力士が「土俵に上がる」ことは、単に取組を行うだけでなく、神道や文化的儀式が組み込まれた哲学的な側面を持っています。力士が土俵に上がる前に行う塩まきや、勝負後の礼など、一連の動作はすべて儀式として重要視されています。土俵は単なる競技場ではなく、神聖な場所として扱われているのです。
「相撲 電車道タオル」に込められた意味と応援グッズとしての人気
日本相撲協会公式ショッピングモール「すも~る」では、「電車道タオル」が販売されています。このタオルは、相撲の迫力ある「電車道」の取組を象徴する応援グッズとして人気を集めています。ファンにとっては、力士の力強い相撲を応援する気持ちを表現するアイテムであり、相撲文化の一部とも言えるでしょう。
相撲と「路面電車」に意外な関係性はあるのか?歴史的背景を探る
「電車道」という言葉が路面電車のレールに由来していることから、相撲と路面電車には意外なつながりがあると言えます。
路面電車は、昔の日本の都市交通を支える重要な手段でした。特に東京の両国国技館は、多くの観客が訪れる相撲の中心地であり、そのアクセス手段として電車道が重要視されてきました。1960年代の東京オリンピック開催時にも、東京は大きく変貌し、都民の足であった「都電」が活躍しました。当時の鉄道写真家・諸河 久さんの写真にも、両国国技館に隣接したJR両国駅前に都電が発着していた両国引込線が写されています。この両国引込線は、震災復興期には新造車両の搬入線としても活用されるなど、その歴史は相撲の街・両国とともに歩んできたと言えるでしょう。
また、近年では相撲観戦をより便利にするために、電車などの交通手段が重要視されており、相撲の開催日に合わせて臨時列車や特別なサービスが提供されることも増えています。相撲と電車道の融合は、地域活性化の面でも重要な役割を果たしており、相撲イベントが開催される際には、周辺地域の商業施設や飲食店も活気づきます。相撲と路面電車の歴史的背景を紐解くと、単なる言葉の由来を超え、日本の都市発展と相撲文化が密接に関わってきたことがわかります。

相撲用語「電車道」に関するまとめ
- 相撲の電車道は、一直線に相手を押し出すこと。
- 電車道の由来は、昔の電車のまっすぐなレールである。
- 電車道は決まり手ではなく、相撲の展開を表す言葉だ。
- 「おっつけ」は相手の差し手を封じる重要な技術。
- 「ごっつぁんです」は相撲界の感謝の言葉である。
- 「いなす」は相手の攻撃を受け流す巧みな技である。
- 「四つ」はまわしを取り合う相撲の基本である。
- 土俵に上がることは神聖な儀式を意味する。
- 電車道タオルは、力強い相撲を応援するグッズである。
- 相撲と路面電車は歴史的に意外なつながりがある。
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