相撲の「同部屋対決」に関する全知識:なぜ普段は組まれないのか?

相撲には、同じ部屋に所属する力士同士は本割で対戦しないという特別なルールが存在します。しかし、優勝をかけた大一番ではその限りではありません。本記事では、相撲における同部屋対決の背景にある深い絆と、その歴史について詳しく解説します。相撲の試合で同部屋の力士同士が対決しないという噂は本当なのでしょうか、なぜそんなルールなのか、歴史から紐解いていきます。


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相撲の「同部屋対決」はなぜ注目される?その背景とルールを徹底解説

大相撲の本場所では、普段あまり見ることのできない同部屋対決。なぜこの対決が注目されるのでしょうか。その背景には、相撲部屋という独特の制度と、力士たちの深い絆があります。

同部屋とは?相撲部屋の役割と力士の関係性

同部屋とは、同じ相撲部屋に所属していることを指します。相撲部屋は、師匠(親方)とその妻であるおかみさん、そして弟子である力士たちが一つ屋根の下で寝食を共にする、いわば家族のような存在です。現在の相撲部屋は約47部屋(平成30年7月現在)あり、各部屋には土俵が設けられています。力士たちはそこで共に稽古に励み、強くなることを目指します。兄弟子は弟弟子に胸を出し、アドバイスを送ることで、互いに成長していく関係性があります。

同部屋の力士は普段どう過ごしている?

同部屋の力士たちは、毎日共に稽古を行い、寝食を共にしています。稽古場では、互いに手の内を隠すことなく、全力を尽くしてぶつかり合い、それぞれの技を磨きます。番付が上の力士が下の力士を鍛え、下の力士はその背中を見て学び成長していきます。このような共同生活を通じて、力士たちは単なる仲間以上の、家族のような強い絆を築いていくのです。

大相撲の「同部屋対決」は特別?対戦ルールとその歴史

大相撲の本場所での15日間の取組を「本割」と呼びます。この本割では、相撲協会の取組編成要領の規定により、同部屋同士の力士の取組は組まれないことになっています。相撲の試合で同部屋の力士同士が対決しないという噂は本当であり、このルールは相撲部屋という大相撲界独特の制度に由来します。 家族同然の力士同士が本場所で対戦することで、複雑な感情が生まれ、本来の稽古の意義や部屋の絆が損なわれるのを防ぐためです。しかし、このルールには唯一の例外があります。それが、後述する優勝決定戦です。過去には、1965年(昭和40年)初場所まで、同部屋や血縁者同士の対戦が組まれることはなかったとされています。


同部屋対決は「優勝決定戦」で実現する?過去の熱戦と力士の心情

普段は組まれない同部屋対決ですが、優勝がかかった大一番では実現することがあります。そこには、力士たちの並々ならぬ覚悟とドラマが生まれます。

優勝決定戦における同部屋対決の条件とは?

同部屋対決が唯一組まれるのが、本割の千秋楽で、同じ部屋の力士が同じ勝敗で並び、優勝が決まっていない場合の優勝決定戦です。この場合のみ、同部屋の力士同士が土俵に上がります。これは、優勝という最高の栄誉を勝ち取るためには、どんな相手とでも戦うという相撲の精神に基づいています。

【厳選】歴史に残る同部屋対決:名勝負と力士たちのドラマ

幕内で同部屋対決が優勝決定戦で実現したのは、1947年(昭和22年)に優勝決定戦が導入されて以降、わずか6回しかありません。その中でも特に印象的なのは以下の例です。

  • 平成元年7月場所:九重部屋の横綱・千代の富士さんと横綱・北勝海さんによる両横綱対決。兄弟子である千代の富士さんに軍配が上がりました。
  • 平成7年11月場所:二子山部屋の横綱・貴乃花さんと兄の大関・若乃花さんの初の兄弟対決がファンを熱狂させ、若乃花さんが2度目の優勝を飾りました。
  • 平成8年1月場所平成9年11月場所:同じく二子山部屋の大関・貴ノ浪さんと横綱・貴乃花さんの対決が連続して組まれました。

これらの対決は、同部屋という特別な関係性の中で、最高の舞台で相まみえる力士たちの複雑な心情と、相撲の奥深さを感じさせるものでした。

同部屋対決で勝利した力士の心境とは?

同部屋対決で勝利した力士は、勝利の喜びと同時に、複雑な心境を抱えることがあります。例えば、1989年7月場所で北勝海さんと優勝決定戦で戦った千代の富士さんは、場所前に三女を乳幼児突然死症候群で亡くしており、精神的に参っていることを北勝海さんは知っていました。北勝海さんは「勝ったら悪者になっちゃうと思った」と当時の心境を語っています。このように、普段から寝食を共にし、稽古で鍛え合ってきた相手との大一番は、力士にとって特別な感情が生まれる瞬間なのです。


兄弟対決や横綱同士の対戦も特別?相撲の様々な「因縁の対決」

同部屋対決の他に、相撲には「兄弟対決」や「横綱同士の対戦」など、特別な意味を持つ取組が存在します。これらの対戦もまた、相撲の醍醐味の一つです。

相撲界の「兄弟対決」:過去の事例と力士の関係性

相撲界における「兄弟対決」も、ファンを沸かせる注目の取組です。同部屋対決と同様に、本割では兄弟同士の取組は原則として行われませんが、優勝決定戦では対戦する可能性があります。過去には、前述の貴乃花さんと若乃花さんの兄弟横綱・大関対決が、多くのファンの記憶に残っています。兄弟だからこその深い絆と、土俵の上での激しいぶつかり合いは、相撲にさらなるドラマを生み出します。

横綱同士の対戦:相撲の最高峰で繰り広げられる名勝負

横綱同士の対戦は、相撲の最高峰で繰り広げられる名勝負として、常に注目を集めます。同部屋対決とは異なり、異なる部屋に所属していれば本割でも対戦が組まれます。高い地位にいる力士同士の対戦は、互いの意地と技術がぶつかり合う見応えのある一番となります。過去には、九重部屋の千代の富士さんと北勝海さんの優勝決定戦のように、横綱同士の同部屋対決が実現したこともあります。

親戚関係(4親等)の力士は対戦する?

同部屋対決や兄弟対決と同様に、大相撲の本割では4親等以内の親族同士の取組も組まれないようになっています。このルールも、力士間の私的な感情が勝負に影響することを避けるための配慮だと考えられます。しかし、優勝決定戦ではこの限りではなく、親族同士でも対戦が組まれる可能性があります。


同部屋出身の有名力士に注目!引退後の関係性はどうなる?

相撲部屋での共同生活を通じて深まった絆は、力士が引退した後も続くことがあります。同部屋出身の有名力士たちの例を通して、その関係性を見ていきましょう。

同部屋から横綱へ昇進した力士はいる?

同部屋から複数の横綱が輩出されることは、その部屋の強さを示す証とも言えます。九重部屋の千代の富士さんと北勝海さん、二子山部屋の貴乃花さんと若乃花さんのように、複数の横綱を輩出した部屋は、相撲界に大きな影響を与えました。彼らは、互いに切磋琢磨し、稽古を通じて強さを高め合った結果、相撲界の頂点に立つことができたのです。

稀勢の里と高安に学ぶ、同部屋力士の絆とライバル関係

田子ノ浦部屋の横綱・稀勢の里さんと大関・高安さんの関係性は、同部屋力士の絆とライバル関係を示す好例です。高安さんが大関昇進を伝達された際、稀勢の里さんは満面の笑みを浮かべ「こんなにうれしいことはない」と喜びを語りました。高安さんも、喜びと安心、そして緊張が入り混じったような表情を見せていました。彼らは共に稽古に励み、互いに刺激し合いながら、それぞれの番付を上げていきました。本割で対戦することはないものの、互いの存在がそれぞれの成長の原動力となっていたことが伺えます。

部屋付き親方とは?引退後の力士と部屋との繋がり

力士が引退した後、多くの場合は「親方」として相撲部屋に残ります。この中でも「部屋付き親方」は、特定の相撲部屋に所属し、力士の指導や育成に携わる親方のことです。部屋持ち親方(部屋の師匠)とは異なり、部屋の運営や経営には直接関与しませんが、師匠のサポート役として、稽古の指導、スカウト活動、力士の生活面でのサポートなど、様々な役割を担います。これにより、引退した力士も、引き続き部屋の力士たちと深く関わり、相撲界の発展に貢献していくことになります。


相撲ファンが知りたい!同部屋対決に関するQ&A

同部屋対決に関して、相撲ファンが抱く疑問は少なくありません。ここでは、特によくある質問とその答えをまとめました。

なぜ普段は同部屋対決がないのですか?

普段、本割で同部屋対決が組まれないのは、相撲部屋という制度が深く関係しています。相撲部屋は、師匠と力士たちが家族のように寝食を共にし、稽古で互いの手の内を惜しみなく見せ合い、鍛え合う場だからです。もし本割で対戦する可能性があれば、稽古で手の内を隠したり、アドバイスをしなくなったりと、本来の強くなるための稽古という本分が失われてしまいます。また、家族同然の相手と勝ち負けを争う際に生まれる複雑な感情や、八百長を疑われるような割を避けるためでもあります。

同部屋の力士が対戦する際、何か特別な感情はありますか?

優勝決定戦などで同部屋対決が実現した場合、力士たちは非常に複雑な感情を抱くとされています。共に稽古し、苦楽を共にしてきた仲間であり、家族同然の相手と、優勝という最高の栄誉をかけて戦うことは、精神的に大きな負担となります。勝利した側も、相手への配慮や、これまでの関係性を鑑みて、純粋な喜びだけではない感情が湧くことがあります。例えば、北勝海さんは千代の富士さんとの優勝決定戦を振り返り、「勝ったら悪者になっちゃうと思った」と当時の心境を語っています。

同部屋対決は今後増える可能性はありますか?

同部屋対決は、優勝決定戦でしか組まれないため、非常に稀なことです。過去の事例を見ても、特定の部屋に上位力士が集中していた時代に多く見られました。例えば、平成初期の二子山部屋全盛期には、横綱・貴乃花さん、横綱・若乃花さん、大関・貴ノ浪さんといったそうそうたる顔ぶれが揃っていたため、優勝決定戦で同部屋対決が複数回組まれました。今後、特定の相撲部屋が複数の上位力士を輩出し、優勝争いに絡むような状況になれば、再び同部屋対決が増える可能性はあるかもしれません。しかし、これは各部屋の力士の活躍次第であり、確実なことではありません。

相撲の対決で同部屋同士の力士が行わない理由についてのまとめ

●記事のまとめ
  • 同部屋対決は原則本割で組まれない。
  • 優勝決定戦では同部屋対決が実現する。
  • 相撲部屋は力士の家族のような存在だ。
  • 力士は部屋で寝食を共にし稽古する。
  • 同部屋対決は過去にわずか6回あった。
  • 千代の富士と北勝海は横綱同部屋対決。
  • 稀勢の里と高安も同部屋で絆が深い。
  • 兄弟や4親等親族も本割で対戦しない。
  • 同部屋対決は力士に複雑な感情を生む。
  • 特定の部屋の隆盛が対決増加の要因である。
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